高齢者の4人に1人!?認知症の実態は?

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認知症の高齢者は、全国で550万人。20年前の約6倍に達しているという調査結果が明らかになりました。

 厚生労働省の“認知症とは”というウェブサイトでは、「65歳以上の高齢者における(認知症の)有病率は8-10%」「我が国の推定認知症患者数は2010年時点では200万人程度」とされていますが、それをはるかに凌ぐ患者数が居るというのが現実のようです。
認知症は、程度の差もあり必ずしも医師の診断や治療を受けている人ばかりとは限りません。介護保険制度の利用からの推計も考えられますが、やはり皆が介護保険を利用しているわけではありません。そのため、正確な患者数が把握されておらず、各方面で様々な研究・調査が行われています。今回の「全国で550万人」という推計は、九州大学が福岡県久山町の住民を対象とした調査から算出されたものです。
ぱっと町名を聞いただけでは、福岡の一地区での調査をもとに全国推計をするとは…とも考えてしまうのですが、久山町は「全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布を持っており、偏りのほとんどない平均的な日本人集団」なのだそうです。

確かに、九州大学の“久山町研究とは”というウェブサイトを見ると、

<就労人口の産業別割合(40歳以上) 全国⇔久山町>
第一次産業 6%⇔6% 第二次産業 25%⇔21% 第三次産業 68%⇔73%
<40歳以上の年齢構成 全国⇔久山町>
 1960年 28%⇔28% 2010年 57%⇔55%

などと、非常に似通った人口構成を示す数字が示されています。
久山町の人々の生活習慣やそもそもの健康状態に特徴があったりはしないのだろうか…と、私などは考えてしまいますが、長年にわたる追跡調査も行われているなど、医学研究の分野では高い精度を保ち広く利用されているのだそうです。

 その2012年調査の結果を見ると、認知症の人の割合(有病率)は65歳以上の検査受診者全体の17.9%。さらに、認知症の予備軍ともいえる軽度認知障害(MCI)の有病率は10%だったとのこと。これを元に全国の患者を推計すると、認知症が550万人、軽度人視聴外が310万人となり、合わせると860万人に達します。全国3000万人余の高齢者のうち、実に4人にひとりが認知症および認知症予備軍ということなのです。

 認知症の増加は、日本だけの問題ではありません。世界保健機関(WHO)は世界の認知症患者は3560万人に達し、高齢化の進行で2050年までに3倍の1億1500万人に増えると予測しています。患者の治療や介護などにかかる費用は年間60兆円を超えており、途上国などでは今後大きな経済的な負担になるとも見られています。そのような状況を受け、先週、ロンドンで初の「G8認知症サミット」が開催されました。認知症患者の増加を、国際協調の元に解決していくべき世界的な問題と捉え2025年までに治療法を見つけ出すことを目指してG8各国が研究費を大幅に増額すること、研究データをできる限り相互に開示することなどが盛り込まれた共同宣言が発表されました。高齢者4人にひとりの認知症・認知症予備軍を抱える高齢化先進国日本が、世界の認知症対策をリードしていくことを期待したいものです。