老後の住まい-住み替え?リフォーム?-

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60歳以上の世帯の持ち家率は約80%

これからの人生、どこに住まいますか?自宅はどうしますか?
 以前、このコラムで「子どもとの同居」を取り上げたことがありましたが、そもそもどこに住むのか、今の住まいをどうするのか、というのは、シニアにとって大きな問題のひとつです。

総務省の「住宅・土地統計調査(2008年)」によると、世帯主が60歳以上の世帯の持ち家率は約80%に達しています。
持ち家があれば住む場所が確保されているということもできますが、だからといってそこにずっと住み続けることが必ずしもよいとは限りません。
郊外の一軒家では買い物や通院などに不便なことも増えてくることでしょう。子どもが独り立ちをして家族の人数が減ると、広い家を持て余してしまいます。
何より、住み続ければ家も老朽化してきますし、耐震性や耐久性にも問題が出てきます。
となると、住み替えるかもしくはリフォームするかということになりますが…どちらを選ぶべきなのでしょうか。

増えるシニアのリフォーム。規模は小規模

住宅リフォーム推進協議会のリフォームの実施状況に関する調査では、60代以上のシニアが施主という割合は、2008年では約4割だったものが、2012年には5割を超えるまでになっており、シニアのリフォームが増えていると分析しています。
シニアのリフォームの目的は、「住宅の老朽化」「老後への備え」「使い勝手の改善」などですが、特徴的なのは比較的小規模な工事の割合が多いこと。
若い世代では中古住宅を自分たちの用途に応じて「間取りの変更」をしたり「広さの変更」を行ったりするケースも多く、マンションでも500万円を超えるようなリフォームを行う人が4割を超えていますが、シニアのリフォーム費用の中心は100-300万円クラスなのだそうです。
シニアのリフォームの主な内容は、「住宅設備の変更」「壁紙・床の張り替え」「外壁・外装の修繕」、「収納スペースの改善」などですが、一般的なリフォーム料金の目安が、浴室150-200万円、システムキッチン120-150万円、トイレ30-40万円とのこと(日本経済新聞2014/1/28)ですので、設備の変更・リフォームであれば200-300万円あれば収まる、ということになりそうです。

一方、三井のリハウスが2013年8月に行った「シニア世代の住まいに関する意識調査」では、リフォームをした人の平均費用は平均717万円とやや高額になっていますが、それでも、住み替えた人の持ち出し費用平均2,497万円と比べるとだいぶ安く済んでいます。
ただ、住み替えた人ではコストパフォーマンス的に「非常に満足」という人が約25%なのに対し、リフォームでは「非常に満足」が15%弱とやや少なく、お金がかかっても住み替えのほうが高い満足感が得られる、ということが、この調査結果からは言えそうです。
リフォームでなく住み替えを選んだという人の理由の主なものは、「買い物や病院など利便性の高いところに住みたかった」「より広いところに住みたかった」「マンションに住みたかった」など。
一方、住み替えではなくリフォームを行った人の理由は、「住み慣れた家を離れたくない」「住環境を変えたくない」「修繕すればまだ住めると感じた」「自分の好きなようにリフォームして済みたかった」など。どういう住まい方をしたいかという想いとともに、周辺環境などの利便性も、住み替えかリフォームかの選択に大きな影響を及ぼすことになりそうです。