-第6回-ワーク・モチベーション

個人と組織とが、新たな活性化をするために

これまで、組織と個人から始まって、組織が個人をどのようにマネジメントするかから、組織開発(OD、Organization Development)という、人間一人一人の本質に迫る組織活性化のやり方の話まで進んできました。

そこで、改めて「モチベーション」について考えてみましょう。

モチベーションとは、モーティブ(動機)を活性化することで、動機とは、いろんな人間の欲求を具体化したもの、例えば、おいしい牛肉を食べたい、という動機は誰でも持っていますが、私は先日滋賀県の大津に出張したとき、松茸と近江牛を、たらふく食べませんか、という地元の友人のモチベーションに会って、たちまち、是非是非、とばかり一緒に行った仲間と合流して、本当にお腹いっぱい「松茸すき焼き」を堪能しました。

マズローの「欲求5段階説」

欲求についてはマズローの「欲求5段階説」が有名で、「生理的欲求」と言われる「食べたい」、「眠りたい」など、生物として生きていくためにどうしてもそれを満たさなければ「生きていけない」欲求から始まり、それだけではなくその状態が維持され、守られている状態を望む「安全の欲求」、さらに、一人で生きていくのではなく集団の仲間と一緒に、感情を交わしながらの生活を望む「所属と愛の欲求」。その中で、自分の位置や能力を高く評価され、尊重されながら生きていける「承認の欲求」があり、その上には、自分が望んでいるすべてのものを得、自分らしく生きていける状態を「自己実現の欲求」が満たされている状態と云います。

この5段階は、生きていくために必要な最低限の条件を満たすという次元から、先ず生きていくために食べることが必要で、そのために働かなければならないということになります。自分の足りないものに対していろんな手段で「欠乏動機」充足が続き、遂には「自分」を認めてほしいという「承認の欲求」に到達するのに対し、最後の「自己実現の欲求」は、自分が生きていく目標に対しすべて実現したいという「成長動機」という別次元の欲求となっています。現在、先進国では、食べるものも着るものも充分に充足されているので、何のために働くのかという「動機」は高い次元となり、かつそれだけに複雑なものになっています。

アルダーファの「ERG理論」

先ほどの私の「松茸、すき焼き」などは、「食欲」という生理的欲求ではあるのですが、これが無いと生きていけないという次元ではなく、一緒に仕事をしている仲間と一仕事が一段落した機会に、仕事の成果をお互いに共有し、それぞれの「役割の実行」をたたえる、という、かなり次元の高い欲求が込められています。

アルダーファという人はマズローの5段階説を修正し、生存の欲求(E)、関係の欲求(R)、成長の欲求(G)の3つを上げ、この3つは低次から高次へと進化するのではなく、同時にそれぞれが活性化される可能性があることを認めました。

私の欲求のケースを分析的に考えてみると、まず、チームの成長を実現するのが第一番に優先と考えており、そのためにチームワークが一体になって有効に働いているという実感が持てることが大切であると考えます。今回、数か月前から準備してきた研修が一応成功裏に終わり、これを前提に、分担したみんなが楽しく交歓できたことが結局一番の成果で、関係の欲求(R)の充足を通じて、成長の欲求(G)が実感できた、ということになるでしょう。

節目節目で自分の内側について考えてみましょう

ワーク・モチベーションの理論では「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の比較が議論になります。外発とは、外から見えるお金、昇進・昇格等で、これらの報酬に動機づけられることは容易に理解できます。内発的は、仕事そのものに内在している楽しさ、やりがい、好奇心の満足、で、これらは、課題への取り組みの中に意味を感じることがその人にとっては、大切なことなのでしょう。どちらが長持ちすると思いますか。

我々はキャリア・カウンセラーとして、皆さんが仕事におけるいろんな節目に到達したとき、現在のこの仕事の意味をどう摑んでいるのか、が大切なポイントと考えます。内発的動機づけについて考え、自分の内側を覗いてみましょう。