-第1回-個人と組織とは、いったいどんな関係にあるのだろう

アイキャッチ「個人と組織とが、新たな活性化をするために」

我々は、生きていくために、なんらかの仕事をして、収入を得る手段を見つけなければなりません。ところが、世の中には生まれながらにして銀のスプーンを口に加え、生活に何の心配も持たない人も少数には存在します。海外に例をとると、王族として国家から保護を受けている貴族、石油資源を抑えている中近東や広大な荘園を所有している大資産家など、我々の考える働くための仕事と生活の関係が、我々とはまったく違ったものであることが分かります。

家族主義的な日本組織

このところ、我が国の自衛権の問題がクローズアップされるようになって感じるのは、改めて、軍国主義や、独裁的な政党または団体の統治する政治的な国家にならずに、この69年を過ごしてきた日本の有難さ、についてです。日本では、民主主義に基づく政治・資本主義を前提とする経済活動を運営することが、国家の行動の規範となっていることに、改めて気づかされています。最初に書いたような、超大な資本が存続されているわけでもなく、封建社会の遺産のような、階級的な制度が残っているわけでもありません。

そこで、日本社会の構造がこれからどうなっていくのか、を考えるとすると、仕事するために働いている個人と、個人が働いている集団としての組織が、それぞれどのように発展して行くのだろうかを考えることが、物事の基本であることになります。

今回のコラムシリーズで、個人と組織、という観点を取り出そうとしているのは、日本はこれまで日本的経営を特徴とされた「3種の神器」で、ある時期には「ジャパンアズNO1」と外国からみればとてもユニークな家族主義的な経営の仕方をしていることが強味の源泉であるとされていました。

グローバル化に伴い変化する組織と個人の関係

ところがバブル崩壊の期間には、逆に、やはり世界を相手にするのだから、「グローバルスタンダード」、端的には「短期成果主義」の徹底が進められ、年俸制採用や、給与、賞与の査定の大変動が起こることになります。それに対して、評価の合理性をどのように説明するのか、却って、お互いが助け合って仕事をするという気風がなくなり、技能も伝達されず、ストレスによるメンタルヘルス不全だけが目立つという、惨憺たる状態になってしまったのでした。このことについて言えば、それぞれの国の仕事の歴史にはそれぞれの理由を持っており、その歴史を理解せず、効率性だけを追求するということは、ありえないことだと言えます。

といっても、歴史も合理性を求めて変化していくわけですから、安易に昔に戻ることを考えると、文字通り、歴史に取り残されてしまうことになります。

この問題は、組織論から始まり組織心理学、産業・組織心理学、と問題が展開しますが、今回は、組織の発展について、コラム的に簡単に説明しましょう。

これまでの会社組織とは

人は、仕事をしなければ生きていけませんが、仕事は、ふつう一人ではできません。一人でやっているようでも、その材料はどこから来たの? 出来上がったらどのようにしてお金に換えるの? と考えると、さまざまな機能のお世話になっていることが分かります。

組織における分業の概念図

右の上段にあるのは、大きな会社の機能的組織図です。社長が目標や基本的な姿勢など方針を流し、営業製造、財務、といった機能別に仕事はつながって進行します。
下の3角錐は、組織心理学者のE.H.シャインが、示したもので、上下に地位役割の流れ、水平方向には職務の機能的な分担を示し、シャインがさらに示したのは、同じ平面であっても、中核にいるか周辺にいるか、立場の違いもあることが理解できます。

これまでの、組織での仕事は、上部から下へ命令、指示が行われ、下からは結果の報告、現場の観測が上がっていく程度でした。これからはどうなのでしょうか。
基本的なパラダイムの転換が起こっていることを、次回に説明しましょう。