スーパー・鉄道・スマホ、シニア割引を家計に生かす

東京都港区に住む女性Aさん(79)は、一定額を払えば都営地下鉄・バスなどが乗り放題になる「東京都シルバーパス」を利用している。週に1〜2回程度、スーパーなどに食品や衣服を買いに行ったり、友人との集まりで出掛けたりする際に使う。「ふだんの外出で交通費を気にせずに済むのがありがたい」という。
60歳以上などが割安な料金で商品を購入したり、サービスを利用したりできる「シニア割引」に関心が高まっている。特にリタイアした人は現役時代に比べ収入が大きく減るのが一般的。年金で支出を賄えなければ、貯蓄を取り崩さざるを得ない。「物価上昇が続くなか、長い老後に備えて節約を意識する人は少なくない」とファイナンシャルプランナー(FP)の横山光昭氏は話す。シニア割を利用すれば、無理のない範囲で支出を抑えることができそうだ。
(日本経済新聞 3月4日)

韓国では、シニア向けの鉄道無料パスを使って、物を運ぶ仕事をしている高齢者がいるそうだ。運賃が無料になる分、若い人よりも安い費用で運ぶことができる。仕事を奪われた若年層からは、不公平だという声も上がった。

しかし、日本では、交通機関のシニア割引を仕事に使うことは希だ。むしろ、普段の外出に使われることがほとんどで、高齢者の外出の機会を増やすのに役立っている。外出機会の増加による高齢者の生活の質の改善と健康増進という本来の政策目的に沿った使われ方が、概ね、されているようだ。もっとも、中には、ほとんど使っていない人もいて、公営交通機関への補助金としての意味はあるが、高齢者対策としては費用対効果に疑問があるケースもある。

一方、スーパーやスマホなど民間企業が行っているシニア割引には、費用を上回る効果がある。一般に、シニアはロイヤリティーの高い顧客層で、一旦獲得すると、他社に流れにくく、繰り返し消費してくれる優良顧客となる可能性が高い。また、高齢化によって、その市場規模も拡大している。

使う方のシニアとしては、「長い老後に備えて節約を意識」しながら割引のメリットを享受するということになるが、安いからといって必要のないものまで買うと節約にはならない。やはり、賢い消費が重要だ。