採用難の英企業、高齢人材向き職場を模索

多言語を操り、人脈が豊富で、複数の欧州大手の衣服通信販売会社で経営に携わってきた93歳の非常勤取締役は、英中部ダービーシャー州アルフレトンに本社がある家族経営のファッション企業デイビッド・ニーパーが雇っている最高齢の人材だ。彼の経験には計り知れないほどの価値があると、同社の2代目社長のクリストファー・ニーパー氏は評価する。同社の工場やコールセンター、事務所で働く多数の高齢社員も同様だという。織物生産の長い歴史がある地域に拠点を置く同社は、以前から閉業した競合他社からスキルのある人材を引き抜いてきた一方、若い新人の採用には苦労してきた。そのため、同社は地元の学校のスポンサーとなる傍ら、年金受給年齢を過ぎた社員に柔軟な勤務時間を可能にしたり年次休暇を1週間増やしたりして、高齢の社員をつなぎ留めようとしている。
(日本経済新聞FINANCIAL TIMES 1月18日)

米国と同様、英国でも、ポストコロナになっても、高齢者は労働市場に復帰せず、人手不足が深刻になっている。今までは、世界の他の国と同じように、企業は若い人にターゲットを絞って採用してきたが、必要な人員を確保するためには、そうも言ってられない状況だ。高齢者を採用し、つなぎとめるために行動を始めた。

そのために重要なのは、勤務時間の柔軟性や持病への支援、キャリアアップの機会、社会的な交流などだが、特に、給与よりも勤務時間の柔軟性のニーズが大きいという。現在、就労していない高齢者は、働かなくても生活ができている人々でもある。その層の人達に就労意欲を持ってもらうには、給与より、それぞれの生活に合った働き方が選択できることがより大事だ。これは、日本でも同じで、高齢者の就労意欲と能力発揮を促進するような柔軟な人事制度の確立に、企業の知恵と努力が求められている。