中国が人口減、働き手10年で9%減、老いる世界けん引役

中国が人口減少時代に入った。2022年末の人口は61年ぶりに前年末を下回り、世界最大の人口大国をインドに譲ったもようだ。産児制限のツケで少子高齢化が止まらず、23年からの10年間で生産年齢人口は約9%減る。働き手の減少が足かせとなり、世界経済をけん引してきた中国の成長にブレーキがかかる。
(日本経済新聞 1月17日)

中国の少子高齢化が加速している。過去の一人っ子政策の影響で、子どもを産む若い世代の人口が少なくなったことが原因と言われることもあるが、少子化の最も大きな要因は、一人当たりの所得が向上したことだ。所得が増加すると出生率が減少することは、世界的にも歴史的にもデータによって証明されている。貧困国の多いアフリカでも、所得の増加に伴って出生率は低下傾向だ。日本でも、所得の低い沖縄県の方が、所得の高い東京都よりも出生率が高い。日本の政府や政党は、少子化対策として、税金をばらまく政策を競っているが、経済的に豊かになると子どもを産まなくなるのは既に証明済みの客観的な事実であり、ばらまき政策は選挙対策にはなっても、少子化対策にはならない。

したがって、中国が出生率の維持、反転を目指すならば、所得が高い都市部の市民がもっと子どもを持とうと思える社会環境を作る必要がある。ただ、日本と同様、高所得層の非婚化、晩婚化が進む状況では、中国政府の政策の効果も限定的だ。中国政府の権威をもってしても、人の心を動かすのは難しい。その中で、今後、中国が重視する政策は、住宅、保育、メイドになってくる。都市部において、農村部と同様の広い家、24時間の保育サービス、外国人メイドによる安価な家事・育児サービスが提供されれば、出生率向上に一定の効果が期待できる。実際、香港では、不動産の高騰を除けば、これらの環境が整ってきた。

それでも少子化が抑制できない場合、中国が生産年齢人口を確保し、経済力を維持するためには、高齢者の就労率の向上が欠かせなくなる。日本と同様の課題だ。