会社員の年金、貯蓄型から脱却

少額投資非課税制度(NISA)と並び、長期の資産形成のカギを握るのが年金運用だ。企業型確定拠出年金(DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の加入者は増え続けているが、定期預金など元本確保型の運用が大半だ。米国では株式の投資信託を組み込む年金運用で家計の資産が増え、投資文化が根付いた。日本でも民間主導で年金改革が動き始めている。
(中略)
富士通も定期預金などの元本確保型をデフォルト商品にしてきたが、これを投資信託に切り替えた。リスクはあるが、株式相場の値動きなどに応じて年金資産が拡大するチャンスは増える。富士通では「DC導入から10年弱たち、全社的に投資に対する抵抗感が薄れてきた」(年金担当者)ことが見直しを後押ししたという。毎月の年金積立額の投資対象の約9割が投信になった。
(日本経済新聞 1月5日)

デフォルトは初期設定という意味で使われる。つまり、明に指定しない場合に選ばれる選択肢だ。多くの企業では、従業員が明に商品を指定しない場合、元本確保型商品を自動的に選択するようにしてきた。それは、元本割れのリスクがある商品への投資には、前もって情報提供した上で同意を取るインフォームド・コンセントが必要だと思われているからだ。自動的に元本割れのリスクのある商品への投資が決まってしまうと、リスクに関する事前の情報提供を十分に行うことができない可能性がある。つまり、インフォームドのレベルが落ちかねない。

ただ、富士通の主要な顧客である銀行や証券会社にとっては、富士通の従業員が定期預金ではなく投資信託を選択すると手数料収入が増加し、利益向上につながる。結果、金融機関から富士通への発注も増える。両者はWin-Winの関係だ。今後は、これが先例となって、金融機関との取引が大きい企業を中心に、DCのデフォルト商品をリスク資産に切り替える動きが続くのかもしれない。