50代の老後資金、インフレでどうなる

円安が進み物価上昇も避けられない状況となっている。これまで老後資金を準備してきた人も、インフレが今後も続くと想定して対策を練り直す必要があるかもしれない。
(中略)
毎年、政府・日銀の物価安定目標となっている2%ずつ物価が上昇した場合、老後の最低日常生活費は10年後に28万3000円に上がる。ゆとりある生活のためには同46万2000円も必要になる。
(日本経済新聞 12月16日)

インフレが継続すれば、生活費は上昇を続ける。現役世代は、物価上昇率に見合う賃上げが実施されれば、実質賃金はマイナスにならず、生活水準を維持することができる。しかし、退職した世代は、年金が減額されて収入が減る中、現役時代に蓄積してきた老後資産も目減りして、年収も資産も実質的にマイナスとなり、生活の維持は難しい。

物価と賃金の上昇を目標とする政府・日銀の異次元金融緩和政策は、結果として、高齢者の富を政府を介して現役世代に再配分し、その過程で、国の財政赤字を抑制しようとする政策だ。物価が高くなれば、消費税の税収は増加し、賃金が上昇すれば、所得税の税収が増加する。一方、低金利を維持すれば国債の利率は上昇しない。

退職した高齢者の立場からすれば、高金利政策の方が望ましい。金利を上げれば、老後資産の運用利回りは上昇し、物価上昇は抑制される。しかし、足元では、市場の圧力によって、日銀は緩和政策の放棄に追い込まれそうな情勢ではあるものの、嫌々行う金利引き上げは後手に回り、インフレは抑制できない可能性が高い。そうなると、高齢者が取れる自衛策は限られる。確かなことは、自衛策のひとつは、退職した高齢者にならずに、現役の高齢者であり続けることだ。