物価高騰「年金だけでは生活できない」 高齢者の就労相談が増加

40年ぶりの物価高の影響が、生活を年金に頼る高齢者世帯の家計に重くのしかかり、将来不安が強まっている。年金の増額が見通せない中、55歳以上のシニア層の就労を支援する静岡県内の相談窓口では、新たに収入を得ようと仕事を探す高齢者の相談者が増えている。
(中略)
同窓口の9、10月の各月相談件数は4~6月の1・5倍ほどに増加した。警備や清掃の業種に限定して11月下旬に開催した就労支援セミナーには応募が殺到した。一ノ宮由美マネージャーは「人によって状況はさまざまだが、物価が上がって今の蓄えで老後を乗り切れるのかと不安に感じるシニア層が増えている」と説明する。
(静岡新聞 12月11日)

新型コロナウイルスの感染は第8波を迎えて再び増加しているが経済再開は進んでいる。感染を恐れて仕事を離れていた高齢者も就労意欲が高まってきた。ただ、高齢者を就労へ向かわせているのは、新型コロナウイルスの感染リスクの低減よりも「年金では生活できない」という現実だ。

今年の冬のボーナスは大企業を中心に増え、来春の賃上げ率も高くなることが予想されているが、一方で年金は引き下げが続いている。物価上昇が加速してきたこの夏以降、年金収入に頼る高齢者の生活は厳しい。消費者物価の上昇率は日銀が目標としてきた2%を既に超え、4%程度にまで高くなった。2023年も、電力料金を始めとして多くの品目で値上げが予定されている。インフレが今後も継続するなら、老後資産も目減りし、高齢者の経済的な不安は増進する。

経済的に困窮する高齢者の生活を安定させるには、比較的短時間かつ長期間就労できる仕事を増やすことが重要だ。フルタイムで3ヶ月の仕事よりも、パートタイムで週3日だが3年以上継続する仕事の方が、高齢者の長期的な生活の支えになる。行政の相談窓口もそうした視点を持つべきだ。