米国のインフレ抑制は道半ば、日本の高齢者就業促進政策見習え

2日に発表された米雇用統計では、労働市場の好調さが改めて示された。賃金の伸びも加速し、連邦準備制度理事会(FRB)が取り組むインフレ抑制がまだ道半ばであることが鮮明となった。賃金上昇を招く人手不足の解消に即効薬はなく、FRB高官からは日本の高齢者就業促進政策を見習うべきだとの声も上がる。
(中略)
リタイアした人の復帰が見込めない中、人手不足は長期化するとの観測も浮上する。こうした中、リッチモンド連邦準備銀行のバーキン総裁は2日の講演で、日本の60~64歳の就業率が年金支給年齢引き上げなどの政策を通じ、大きく上昇したと指摘。「こうしたアイデアは米国で検討するに値する」と訴えた。
(時事通信 12月4日)

原油、天然ガスなどの資源や小麦、トウモロコシなどの穀物の価格が下落し、米国の物価上昇は鈍化してきた。しかし、賃上げによる物価上昇圧力はなお強く、FRBは金利を高めに誘導する金融引き締め政策を継続する構えだ。米国のインフレを抑制し、金利の過度な上昇を回避して景気後退を浅くすませるためには、労働力を増やして賃金上昇を抑える必要がある。

米国における労働力不足の一因は、コロナ禍で仕事を辞めた高齢者が労働市場に戻ってこないことだ。FRBのバーキン氏が日本の政策を引き合いに出して高齢者の就業率を向上させる政策を求めたことは、金融政策だけでインフレと戦わざるを得ないFRBの焦りも感じさせる。

ただ、日本の高齢者就業率が向上した要因には、年金支給年齢の引き上げだけでなく、企業に対して、65歳までの雇用を求めたこともあった。しかし、定年という制度のない米国で、企業に対して特定の年齢までの雇用を義務付けるのは無理がある。米国では、高齢者自身が働きたいと思うモチベーションを喚起する政策が必要だ。そして、もし、そのような政策が成功したなら、それは、日本にとっても参考にすべき政策となる。