中国で高齢者が抗議デモ、医療保険改革に反発

中国で15日、数万人の年金生活者が街頭に繰り出して医療保険改革に抗議した。改革の背景には、莫大な費用を伴った「ゼロコロナ」政策の後、財政難に陥った各都市の政府が支出の引き締めへと動いていることがある。
(中略)
武漢市では先週、強制加入の労働者の医療保険のために拠出されている積立金を国が管理する通院(一般外来)保険の基金に振り向ける政府の施策を巡り、退職者らが反対を訴えるデモが発生した。同市では1日に改正が施行された。
(FINANCIAL TIMES 2月16日)

政府よりも共産党が強い権力を持ち、厳しい思想統制を行っている中国で、数万人規模のデモが繰り広げられるのは珍しい。それだけ医療保険改革に対する高齢者の怒りが大きいということだが、この改革で得をする人と損をする人との間で、社会が分断される可能性がある。デモが実行できたということは、恐らく、中国共産党の中でも利害の対立があるのだろう。

問題の本質は、中国の地方政府が、個人の積立金を他人の医療保険に流用しようとしていることだ。既に十分な額を積み立ててきた高齢者にとっては損で、まだ積み立てていなかった人にとっては得になる。

日本でも同様に、目的外の基金の流用は国民の反発を招く可能性がある。たとえば、子育て支援に厚生年金から資金を拠出するというようなことは、年金の掛け金を支払ってきた人にとって、納得することは難しい。中国のようなデモに発展することはないかもしれないが、掛け金を払った後になって、その使い道を変更するのは、無理がある。