高所得75歳以上の保険料上げ検討

厚生労働省が検討している医療保険制度改革案の概要が分かった。75歳以上の後期高齢者について高所得層を中心に保険料を引き上げ、現役世代からの拠出金負担を抑える。支払い能力に応じて負担を求める観点から、大企業の健康保険組合にも負担増を求める。高齢化で医療費の増加が見込まれており、制度の持続性を高める。
(日本経済新聞 10月16日)

国民年金の給付水準を下げないために、厚生年金から補填することが検討されているが、同様なことが、医療保険でも進んでいる。後期高齢者の中の高所得層の保険料を引き上げるとともに、大企業の健康保険組合の負担も増やす。高所得の高齢者の負担を増やすのは、同じ世代の中での負担割合の変更だが、健康保険組合を企業規模で区別して大企業だけ負担増を求めるのは、世代を超えた負担割合の変更になる。大企業の従業員の負担を増やして、後期高齢者の医療費を支える構図だ。これでは、「現役世代からの拠出金負担を抑える」という今回の医療保険制度改革案の目的に反する。結局、取りやすいところから取るという発想から脱却できていない。これでは、資本金を減資して中小企業になったり、国内の従業員を削減して海外の従業員を増加させたりする大企業がますます増える。

そもそも、健康保険制度の持続性を高めるには、保険の収入の増加だけでなく、支出の削減も重要だ。日本の高齢者の医療費は、亡くなる前の3年間が高い。健康寿命を延ばして就労可能年齢を上げるとともに、終末医療のあり方について、国民的なコンセンサスを得る努力が必要だ。