「放置年金」5年で7割増2400億円、運用機会111万人逃す

転職時に必要な手続きをしないために現金のままで管理される年金資産が増えている。こうした「放置年金」は約2400億円にのぼり、5年間で7割近く増えた。企業が運営する確定拠出年金(DC)の加入資格を転職などで失った人などが対象で、7月末時点で111万人いる。長期的には運用の機会を逃すことになり、老後資金の確保に影響が出る可能性がある。個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)に移しやすくする制度の改善などが急務となる。
(日本経済新聞 9月7日)

放置年金が増加しているのは、主にDCの加入者が増えたからだが、転職率が上がる一方で転職時に年金を放置する割合が一向に減らないからでもある。中には自ら望んで現金で受け取る人もいるものの、多くの場合、必要な手続きを怠ったか、知らなかったために、DCが転職先に移行されていない。

10月からは、DCとイデコの併用が容易になるため、転職前のDCを転職後はイデコとして運用することも選択肢のひとつだ。ただ、イデコに移すのにも手続きは必要になる。放置年金の問題は、手続きをせず、放置すると国民年金基金連合会が手数料を取って現金で管理するというルールにある。つまり、デフォルトが現金という現行ルールを変えない限り、DCを放置する割合は劇的に減りそうにない。特に、転職者が高齢になると、手続きが必要であること自体、年金移行の障壁となる。手続きをしなくても転職先のDCへ、DCがなければイデコへ自動的に移管し、明に手続きをした場合にのみ、現金を含めて指定の方法で受け取れるようにするのも解のひとつだ。