鉄道会社の「シニアパス」は沿線の商圏復活への契機となるか

国際的な観光都市として知られる京都市が、新型コロナウイルスの感染拡大による観光の低迷などによって急激な財政悪化に悩まされている。対策のひとつとして、手厚い事で知られる市民サービスも削らざるをえず、そのひとつ「敬老パス」対象年齢を段階的に引き上げることになった。京都市に限らず、名古屋市でも無制限から利用回数に制限ができるなど、自治体の敬老パスは徐々に利用制限や廃止というケースが目立ってきている。一方で、鉄道会社からは、お得な新商品としてシニア向けの乗り放題パスの発売が続いている。
(NEWSポストセブン 8月30日)

自治体が高齢者に提供している敬老パスは、税金で費用を賄うため、鉄道会社にとっては、実際に乗車するかどうかに関わらず固定収入となる。一方、鉄道会社が発売するシニア向け乗り放題パスは、割引金額を鉄道会社が負担する。運賃を割り引けば、鉄道会社にとって収益悪化の要因となるかもしれないが、乗客が増えれば増収要因になる可能性もある。今は、その効果を見極めるための施行期間のようだ。

フルタイムで働いていないシニアの場合は、朝夕のラッシュ時の利用頻度が少ないため、鉄道会社にとっては、費用増加の要因にならない。日中の空席が目立つ時間帯には、空気を運ぶより、割引料金でもシニアに乗車してもらった方が増収となる。また、大都市の鉄道会社は、ターミナル駅近くに百貨店を持っていることが多いが、百貨店の主要顧客は外国人と高齢者だ。高齢者の外出頻度を上げることは、商業施設の売上向上にも貢献する。これらの効果が実証されれば、シニア割引は鉄道会社の恒常的な制度として取り入れられるだろう。