人手不足644万人、年金や介護臨界

日本は人口減少によって国家が縮んでいく現実にどこまで真剣に向き合っているだろうか。継続的な人口減少局面に入ってからすでに14年たったのに、労働力不足を克服し、年金、医療、介護の機能不全を防ぐ道筋は見えない。少子化対策も踏み込みが甘く、このままでは「ゆでガエル」になりかねない。
(日本経済新聞 7月25日)

「ゆでガエル」とは、水の温度を少しずつ上げていくと、中のカエルは、危機感を持たず、逃げようとせずに脱出の機会を逸して死んでしまうという寓話だ。実際には、カエルはそれほど鈍感ではなく、水が熱くなると飛び出す。カエルが自分の感覚に正直に反応するのに対して、人間は根拠なき楽観に浸りたがる。外部環境の悪化は、その変化がゆっくりだと、今すぐに対応しなくても良いだろうと思いがちだ。

経済成長率のような経済指標とは異なり、人口変動は出生率や寿命の変化からかなり正確に予測できる。今日の少子高齢化は、30年前には分かっていたことだ。しかし、対策は常に後手に回ってきた。その結果、日本の労働力不足は危機的な状況に至っている。まずは、高齢者や女性の就労率を向上させることが重要だが、日本の総人口が減少している中にあっては限界がある。外国人の受け入れか、出生率の向上が必要だ。

抜本的な解決策は出生率の向上だが、今までの国の少子化対策は、国民受けする経済的な支援に偏っている。しかし、統計的なデータ分析によれば、子供を産まないのは経済的な理由からだけではない。実際、平均所得の高い東京より、平均所得の低い沖縄の方が出生率は高い。出生率に影響を与える要因としては、非婚化や晩婚化、あるいは、大家族や地域社会の育児支援などの方が、経済的な問題よりインパクトが大きい。今の世代への人気取りではなく、次世代の幸福のために少子化対策を考えるべきときだ。