近ツー親会社、シニア社員を社外派遣 コロナ後需要期待

近畿日本ツーリストを傘下に持つKNT-CTホールディングス(HD)は、シニア人材の派遣事業に参入する。60歳以上で再雇用を希望する社員をグループ内の派遣会社で再雇用し、ホテルや観光施設などに派遣する。新型コロナウイルス禍で旅行業や観光業は打撃を受けたが、感染収束後は需要が回復すると判断。シニア人材のノウハウを生かした派遣ビジネスに商機を見いだす。
(日本経済新聞 4月24日)

大手の旅行代理店は、取引先として宿泊施設や観光施設を数多く抱え、退職した従業員は取引先に再就職することが多い。しかし、退職した従業員が他社に転職することは、その従業員が生み出す付加価値を他社に渡すことでもある。退職者の人件費は削減できるが、自社の付加価値も低下する。

一方、近畿日本ツーリストが始めたように、自社グループ内で退職者を再雇用して取引先に派遣すれば、退職者が生み出す付加価値は自社グループ内に留まる。派遣先から得られる収入は自社の売上の一部だ。不要になった不動産を売却するのではなく、他社に貸して賃貸収入を得るのに似ているが、人材は教育次第で価値を向上させることもできる。また、派遣社員間でノウハウを共有して付加価値をさらに向上させることも可能だろう。シニア人材の既存のノウハウを生かすだけでなく、ノウハウをさらに向上させる施策もシニア派遣ビジネスを成功させる上で重要だ。