増えるシニア雇用、減る新卒採用

企業が社員の定年を延長してシニア人材の雇用を拡大していることが、デロイトトーマツグループが行ったアンケートで明らかになった。過去4回の調査で上昇傾向にあった新卒採用と中途採用の割合はいずれも減少した。少子高齢化で、これまではリタイアしていた世代の雇用が増えつつあるが、シニアの人件費が増えた分だけ新規雇用が抑えられるなどの課題も指摘されている。
デロイトトーマツは4日、2021年度を対象としたリポート「要員・人件費の生産性に関するベンチマーク調査2021・2022年版」を発表。180社から聞いた内容をまとめると、新卒採用者の割合が前回の3.1%から今回は2.8%に、中途採用者の割合が前回の2.1%から1.4%に減少していた。昨年度は新型コロナウイルスの影響により採用人数が絞り込まれたことが低下につながったとしている。
(SankeiBiz 4月4日)

新卒採用者と中途採用者の割合が減少し、シニアの割合が増加したのは事実だが、その要因が「シニアの人件費が増えた分だけ新規雇用が抑えられ」たから、というのは定かではない。むしろ、「新型コロナウイルスの影響により採用人数が絞り込まれた」影響の方が大きいと思われる。

定年延長などのシニア層の雇用確保は、法改正への対応の必要もあり、長期計画に沿って着実に進めなければならないが、新規採用はそのときの業績や事業環境によって左右されやすい。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が繰り返し発出される状況の下、先行きの不透明感から新規採用を抑制する企業は増えた。

新型コロナウイルスは未だ終息に至っていないが、ワクチンや治療薬の普及によって、経済活動に制限がかかる可能性は減っている。今後は、経済の正常化に伴って、新規採用は増加するだろう。特に、中途採用は、新卒採用のように卒業者の総数が供給の限界となることもないため、継続的な増加が予想される。中途採用のシニアも増える可能性がある。