賃上げを実感するのは…正規より非正規? 若者より高齢者?

経団連の十倉会長と連合の芳野会長は1月26日労使トップ会談を開き、今年の春闘がスタートした。岸田政権が求める賃上げがどこまで実現するのかが焦点となっている。去年の春闘はコロナ渦での雇用維持がメインテーマだった事もあり、今年は賃上げへの関心が例年にないほど高まっている。だが、実際に「賃上げされる」との実感を持つ人はどれだけいるのだろう。FNNが行った世論調査データを分析してみると、「若年より高齢層」「正規より非正規」など特徴が見えてきた。

(FNNプライムオンライン 1月27日)

賃上げされると実感を持つ人がどのぐらいいるかは、政府の賃上げ政策の効果を測定する重要な指標だ。岸田政権は、賃上げが消費拡大をもたらして経済成長を促し、デフレ脱却につながるとして、経団連に賃上げを求めている。しかし、この論理は、あまりに大雑把で「風が吹けば桶屋が儲かる」という話に似ている。

賃上げが行われても労働者が賃上げされたという実感を持たなければ支出を増やさない。仮に、賃上げの実感を持ったとしても、老後など将来に不安があれば消費ではなく貯蓄を増やす。消費が増えたとしても、消費財の多くが輸入品であれば国内の経済成長への効果は限定的だ。国産品の消費が増えたとしても、流通業界でアマゾンのような外資系企業のシェアが伸びれば多くの利益は海外へ流出する。

FNNの世論調査によれば、賃上げの実感を持つ人は、「若年より高齢層」「正規より非正規」が多いという。一方、大企業は、近年、高齢層の賃金を抑制して若年層の賃金を上げてきた。岸田政権は、経団連に春闘での賃上げを要求しているが、経団連を構成する大企業が春闘で上げようとしているのは、若年の正規社員の給与だ。賃上げの実感を持つ人を増やす効果が最も薄い層だと言える。政府が、賃上げを実感する人を増やそうとするなら、高齢の非正規の賃上げ実現に注力すべきだ。