もらいすぎ中高年に包囲網 報酬調査「点から面に」

あらゆる仕事の報酬を調べて統計データとして提供する専門サービスが急伸している。日本の大企業の間にも、仕事の内容によって報酬を決める「ジョブ型雇用」が広がってきたからだ。一人ひとりのスキルや職種の需給に応じた報酬相場は、年功序列で昇給の階段を上がってきた「もらいすぎ中高年」をあぶり出す。労働市場の地殻変動は止まらない。
(日本経済新聞 11月14日)

大企業が年功序列制からジョブ型雇用へ転換しようとする動機のひとつは人件費の削減だ。特に、中小企業に比べて高いとされる中高年の給与の抑制が目的となっている。ジョブ型雇用の給与を決めるには、客観的な事実な基づいた合理的な給与水準を明らかにする必要があるため、報酬調査サービスを利用して市場価格を把握しようとする企業が増えてきた。

その結果、AI技術者のように市場価格の方が高い人材の場合は現状よりも給与が上がる一方、多くの中高年の給与は下がる可能性が高い。多くの大企業では、60歳未満の人件費総額は削減の方向だ。70歳まで雇用を継続させる一方で、企業全体の人件費を増加させないためには、こうしたリバランスが必要になる。岸田政権は企業に対して賃上げを求めているが、70歳までの就業機会確保を求める高年齢者雇用安定法の改正が企業に対する賃下げ圧力になってきた。