コロナで早期退職、ベビーブーマー300万人

新型コロナウイルスの影響で早期退職した米国のベビーブーマー世代(1946~64年生まれ)は300万人を超える――。米セントルイス連銀のエコノミストがこんな試算を公表した。コロナ後に減少した労働力人口の半分以上の規模になる。感染リスクへの不安に加え、コロナ下で生じた資産価格の急上昇が労働市場からの早期退出につながった可能性を指摘した。
(日本経済新聞 10月30日)

高齢者ほど新型コロナウイルスの感染リスクが高いため、高齢者の中には、自らの意思で退職する人が少なからずいる。このため、日本のシルバー人材センターの会員数も減少気味だ。一時期、日本よりも厳しいロックダウンを実施した欧米では、この傾向はさらに顕著だった。その後、各国で経済が再会されたが、高齢者はなかなか復職していない。

その要因のひとつは、米セントルイス連銀が指摘しているように、資産の増大にある。特に、米国では、株価や不動産価格が上昇しており、一定の資産を持っていれば、富裕層でなくても働く必要を感じなくなった。

経済が再開して雇用が拡大する一方で、労働参加率の回復が遅れているため、人手不足が経済回復の足かせになろうとしている。この状況から脱却するには、資産を持っている層でも仕事をしてもよいと思えるぐらいに賃金が上昇する必要がある。日本では政府が賃金上昇を企業に求めているが、世界的には、賃金上昇を始めとするコストプッシュ・インフレを警戒しなければならない局面になってきた。