多摩市シルバー人材センター 会員急増で手腕に注目

60歳以上の多摩市在住者に就業機会を提供している多摩市シルバー人材センターの登録会員数が昨年度、前年度比で130人以上の増加をみせた。コロナ禍で各地のセンターが会員獲得に苦戦するなか、年会費を免除するなどの取り組みが注目を集めている。
(中略)
会員は昨年度、2019年度の1001人から1137へと136人増加。全国シルバー人材センター事業協会に加盟する団体のなかでその数は全国3位にあたる増加で、対前年度比でみた増減比は、多摩よりも人口の多い上位2つの市(神戸・鹿児島市)を上回った。
(タウンニュース多摩版 8月26日)

新型コロナウイルスの感染拡大で、仕事に出ることを敬遠する高齢者が増え、各地のシルバー人材センターは、人集めに苦労している。ワクチン接種が進み、感染が収束に向かっている今なお、なかなか高齢者はシルバー人材センターに帰ってこない。

そんな中、10%以上会員を増やした多摩市シルバー人材センターが注目を集めている。会員が増加した最大の要因は、会費の無料化だ。そもそも、仕事を斡旋してもらえるかどうか分からないのに、一定の会費を取られることに違和感を覚える人も多かった。ハローワークや民間のマッチング・サービスなら固定費はかからない。シルバー人材センターは、仕事の斡旋だけでなく、高齢者のコミュニティーの形成という役割も担うが、それもコロナ禍で人が集まれない状況が続けば、その役割を果たすことも難しい。

そこで、多摩シルバー人材センターは、会費という固定収入、会員から見ると固定費を無くし、仕事の斡旋の成功報酬で採算を取ることにした。会費を無料にすることで会員が増えれば、マッチングの成約数も増え、成功報酬は増加して、結果として採算が改善する。民間企業であれば、普通のマーケティング戦略だが、ほとんど官業のシルバー人材センターにとっては、新しい発想の経営だ。他の地域のシルバー人材センターも、この事例を参考にして、運営を見直すことを期待したい。