シニアは仕事で移住も辞さず 専門武器に企業へ自治体へ

期間を定めて他の地域に移住し、自分の専門的知識や経験を自治体や企業に提供するシニアが近年目立ち始めた。任期付き自治体職員への応募、転居を伴う人材派遣など方法は異なるが、共通するのは「現場」への情熱だ。年齢が上がれば現場を退くのが当然という、旧来の組織風土を変えていく動きでもある。
(日本経済新聞 8月12日)

定年退職後は、今まで働いていた企業に再雇用される人が多いが、一方で、定年退職を機に、新しい職業を模索する人もいる。新しい仕事を探すとき、場所に拘るか、仕事に拘るかは人それぞれだ。故郷に残している親の介護のためにUターンするような場合は、場所が優先されるが、やりたい仕事が明確な場合は、その仕事に就けるなら場所は問わない。特に、現場で培ってきた専門的なノウハウを持っている人は、その能力を活かせる職場を優先し、場所には拘らないものだ。

求職者にとって、現在居住しているところから遠い地域の求人情報は探しにくいものだが、自治体の場合は、ネットなどで公開することが多く、全国の求人情報を収集しやすい。そういうこともあって、地方の自治体が、必要とする専門家を全国から募集し、採用することが普通になってきた。今までは、自治体の外部人材の登用といえば、総務省を始めとする霞ヶ関の中央官庁の官僚だったりしたが、それは官僚のキャリアパスに組み込まれていたからで、その目的は、官僚が地方での行政経験を積むことにあり、地方自治体が官僚の経験を活用することではなかった。これからは、自治体が主体的に外部の経験を全国から獲得して活用する時代になるだろう。