ホンダ「アシモ」の開発者がハサミメーカーを支援 定年後に「新天地」で挑戦

高齢者雇用安定法が改正されて、企業は4月から70歳までの社員の就業機会を確保するよう努力しなければならなくなった。
(中略)
理美容師向けのハサミを手作り製造しているヒカリ(東京都板橋区)の高橋一芳社長が12年に地元の滝野川信用金庫の誘いで交流会に参加した。そこで出会ったのが、本田技研工業で2足歩行のロボット「アシモ」の開発に携わった生粋のエンジニア、西川正雄さん(当時76歳)だった。30人の職人が働くヒカリでは、繊細なプロ向けのハサミが作れるようになる技術の習得に、経験と勘に頼っていたため約10年も掛かっていた。だが西川さんが開発した道具を使うと、わずか1週間でできるようになったという。

(日本経済新聞 7月31日)

大企業の従業員が定年後に中小企業で活躍する例は多い。しかし、潜在的には活躍する場がありながら、大企業のシニアと中小企業とのマッチングがうまくできず、その機会が顕在化しないままになっているケースはもっと多い。

この記事で紹介されたケースで言えば、理美容師向けハサミの製造とロボット「アシモ」の開発の間にどのような関連があるのか、直感的に理解することは困難だ。企業が求人票に「ハサミの製造技術者募集」と書き、求職者が履歴書に「ロボットの開発経験あり」と書いただけでは両者が出会うことはなかったかもしれない。

この点、この記事が紹介する交流会では、まず、企業が直面する課題を具体的に提示し、その達成を支援できると思う求職者が応募する。企業は、その中から候補者を数人に絞り込み、面談を経て、最終的に採用する仕組みだ。この一連のプロセスによって、企業ニーズに合った価値提供ができる人の採用を可能にしている。求人と求職のマッチングの精度を上げる方法としては、参考になるやり方だ。