60歳、4人に1人が「貯蓄額100万円未満」富裕層と二極化

生命保険会社のPGF生命(東京都千代田区)が「2021年の還暦人に関する調査」を実施した。調査によると、現段階の貯蓄金額が「100万円未満」と回答した割合が25%で最多となった。
(中略)
昨年の調査結果と比較したところ、20年平均の3078万円と比較して21年は52万円減だった。貯蓄額を「5000万円~1億円未満」「1億円以上」と回答した割合は20年と比較して増加、「100万円未満」と回答した割合も20年から4.2ポイント増加している。100万円以上~5000万円未満の中間層は20年と比較して「500~1000万円未満」以外は減少。このことから、今後は貧困シニアと富裕層シニアの二極化が進む可能性が考えられる。
(ITmedia 6月18日)

この調査で、平均額は3026万円だった。60歳で定年退職し、退職金をもらったばかりで、貯蓄をある程度持っている人が多いのか、とも思えるが、実際には、中央値はもっと低い。1000万円未満の人は57.9%と半数を超えている。つまり、全体の半数以上が1000万円未満で、4分の1は100万円未満ということだ。多くのシニアは、不動産など金融資産以外の資産も持っているとは思われるが、資産運用で生活するのは厳しい人が多数派であることが分かる。

中間層が減少し、貧困層と富裕層の二極化が進む傾向は、シニアだけでなく、若年層にも見られる。しかし、シニア層の方が、長い期間の資産蓄積の結果が今の資産額に表れるので、両極の差が大きくなりやすい。

一旦、多くの資産を持てば、働かなくても収入はある程度確保できる。日銀のマイナス金利政策の下では、預金で十分な利子を得ることはできないものの、株式やリートなどに投資すれば、一定のリターンを得られる。たとえば、新型コロナウイルスの感染拡大で株価が暴落した2020年3月に米国株の代表的な指数であるS&P500を買った人は、1年後の2021年3月には、価額が64%増になったことで多くの利益を得た。1億円の投資をしていれば、6400万円の利益を獲得したことになる。緊急事態宣言で職を失った人がいるのとは対照的だ。

就労に対する考え方も保有資産の額によって異なる。シニアの就労機会の拡大を考える上で、資産の二極化が進行している現状を考慮することは重要だ。