水稲育苗やキュウリ栽培施設、地元高齢者の雇用促進

東京電力福島第1原発事故で避難指示が出された南相馬市小高区に整備される栽培施設は2023年4月の完成を予定している。
(中略)
施設の整備は、小高区などでの営農再開を支援し、住民の帰還を促すのが目的。育てた苗は市内の農家に販売し、育苗の手間を省くなどして営農の環境を整える。キュウリはほかの農作物よりも栽培しやすい利点があるため、農業未経験の地元高齢者らの雇用促進を図る狙いもある。
(福島民友 4月24日)

高齢化が進む日本の農業を持続可能な産業にするために、ITを駆使したスマート農業が各地で始まっている。これらの取り組みは、主に農業従事者が高齢になっても農業を続けられるようにすることが目的だが、農業未経験の高齢者の雇用拡大にも寄与する。

福島第1原発の周辺地域では、従来、地域経済を支えてきた原発関連の雇用が激減し、住民が帰還したくても十分な求人がない。加えて、住民の多くは高齢者であり、職業を変えることのハードルは高いという事情もある。したがって、地域経済のもう一つの柱である農業で高齢者の新規雇用が拡がれば、住民の帰還の促進にとって効果的だ。

南相馬市が簡単なキュウリを栽培する農作物に選んだのは、農業未経験者でも育てることができるからだが、ITを活用すれば、さらに農業への参入障壁は低くなる。たとえば、愛知県のJA西三河などが2019年度から実施している実証事業「ICTに基づく養液栽培から販売による施設キュウリのデータ駆動経営一貫体系の実証」は、10%以上の作業時間削減と30%以上の反収向上を目指してきた。これらの知見を全国で共有して地域のノウハウを積み上げれば、農業未経験の高齢者でも少ない労力で多くの収穫を得るキュウリ事業の実現に近づくことができるだろう。