70歳まで雇う努力義務、給料減らない企業も

4月から、企業は社員が70歳まで働ける場をできるだけ用意するよう努めることになった。人口が減るなか、働くお年寄りを増やし、年金や健康保険の財政負担を軽くするのがねらいだ。
(中略)
主に半導体の製造装置向けの特殊なガラス部品を作る英興(京都市伏見区)。94人の社員のうち、60歳以上は16人。70歳以上は5人いる。定年は65歳で、希望者は全員70歳まで働けるようにした。健康であれば、さらに働き続けられる。こんな仕組みにしたのは、特殊なガラスを加工できる職人は全国でもごく少なく、代わりがなかなかいないためだ。経験を積むほど加工の質が上がるため、給料の水準は年配になっても下がらない。
(朝日新聞デジタル 4月11日)

一般に、手に職のある人々は歳を取っても働くことができる。たとえば、医師や弁護士に定年はない。労働力の需給がタイトな職種では給料も減らず、経験がものをいう仕事ではむしろ報酬が高くなることもある。

医師や弁護士のような国家資格を必要とする専門家でなくても、この記事が紹介しているように特別な技能を持った職人もまた、企業から重宝がられる存在だ。日本の製造業は、こうした技能職の技によって支えられてきた。大企業の工場がスマートファクトリーに置き換わり、人からAIやロボットに作業の中心が移行しても、中小企業の職人技が必要な工程は残る。

企業にとって、こうした能力が生み出す価値を客観的に評価することが重要だ。資格が必要な仕事は、資格の内容で能力を把握しやすい。製造業の職人なら生産物の品質で技量を知ることができる。しかし、事務処理における能力は可視化されていないことも多い。シニアの能力を本人と企業との双方が納得できるように評価できたなら、業務と報酬について、より良いマッチングが可能になるだろう。