70歳就業、道は険しく生産性向上迫られる高齢者

70歳まで働き続けたい人に就労機会を用意することが、1日から企業の努力義務になった。「生涯現役」時代に向けての制度だが、企業の人件費負担が過重にならないためには本人の生産性に応じて賃金を決める仕組みが欠かせない。働く場の確保を同じ企業に求め続ける「生涯1社」主義に無理はないのかという問題もある。
(日本経済新聞4月1日)

4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行されることに伴い、65歳を超えて働くことを可能にする企業が増えてはいるが、持続可能性を懸念する声もある。シニア従業員が生み出す付加価値と待遇とのバランスが取れていないと制度の持続は難しい。
ただ、シニアが生み出す価値の評価は、企業によっても異なる。たとえば、人手不足に悩む企業ではシニアの価値の評価は高く、余剰人員を抱える企業では評価は低い。自由で流動性の高い労働市場があれば、シニアは評価の低い企業から高い企業へ転職することになるが、日本では、それほど流動性は高くない。シニアの転職は、若年層に比べれば、まだハードルが高いのが現状だ。
改正高年齢者雇用安定法は、企業に対して70歳までの雇用機会の提供の努力義務を課した。しかし、企業を越えてシニアが容易に流動する社会を作る努力義務は、行政が負うべきものだ。今後は、行政の役割も問われることになる。