地元神社の盛り上げ、シニアが力添え

かつて多くの住民が集まり、活気ある祭りが催された地域の神社。昔ながらの近所付き合いが薄れ、すっかり静かになった境内を盛り上げようと、シニア世代がさまざまな取り組みを進めている。
賽銭(さいせん)箱、おみくじ掛け、線香立て――。「黒龍神社」(名古屋市西区)の境内に手作りした品がいくつも並ぶ。とりわけ参拝客の目を引くのが、社殿に鎮座する木彫りの「龍神像」だ。とぐろを巻いた龍の全長は約10メートル。神社の世話人を務める小田良巳さん(76)が6年かけて独学で彫り上げた力作だ。
(日本経済新聞中部版 12月24日)

地域の神社は氏神様として、その地域のコミュニティー活動の場を提供してきた。特に、転居する人が少なかった江戸時代までは、氏神を祀る氏社とそれに属する氏子の関係は、地域共同体の絆を維持する上で重要な役割を果たしていたものだ。

現在、人は自由に居住地を変える。たまたま済んでいる場所の近くに神社があっても、そこが自分の祖先神を祀っているところだとは思わない。神頼みをしたい事がない限りお参りしない人の方が多数派だ。

しかし、近所の神社は、今なお、住環境の一部であり、そこが美しくメインテナンスされていれば、地域の住民にとっては心地よい空間となる。そうした環境を維持するために、ノウハウと時間を持っているシニアが協力して貢献することは、地域コミュニティーを活性化するとともに、シニア自身の自己実現を図る上でも重要だ。地元の神社には、自治体のコミュニティー・センターとは、また違った役割がある。