シニア社員、社内公募で経験生かす

経験を生かして希望の職場に異動――。仕事に合わせて必要な人材を募る社内公募制度をシニア社員が利用している。企業の高齢化が進む中、50代以上を対象にした社内公募を実施する動きが拡大。社員の希望と企業のニーズが合致すれば、積み上げた経験をもとに生き生きと働ける。
(日本経済新聞 10月1日)

新卒で入社してから定年まで、同じ部門に所属する人は多いが、そこで培われた能力や経験は、他の部門でも活かすことはできる。むしろ、他の部門でこそ必要とされていることもある。大規模なリストラの場合は、会社主導で部門間の異動を大量に短期間に実施する必要があるが、定常的な異動は、社内公募で社員と各部門とのマッチングを丁寧に行った方が社員と各部門の満足度は共に高い。

このマッチングの精度を上げるには、各部門はどのような能力を持った人材を必要としているのかを明確にしなければならない。一方、応募するシニア社員の方も自己の能力の具体的な説明を求められる。双方がこうした努力をすれば、たとえ異動に結び付かなくでも、各部門内での社員と組織の相互理解が深まり、社員の客観的な評価も可能になる。これは、シニアに限らず、全ての世代の社員について言えることだ。

若い世代にまで公募の対象を広げることには、働き盛りの優秀な社員を他部門に奪われることを恐れて、反対する組織も少なくない。しかし、優秀な社員を部門間で争奪するのは、企業全体での経営資源の最適化を考えれば、健全な競争でもある。社内公募は、シニアに限らず、人事制度の標準的な要素として捉えるべきだ。