高年齢層の雇用拡大は新卒採用にどう影響するか?

若年者は高年齢者に比べて体力を要する仕事やパソコンを用いた仕事、そして新しい仕事に優れていることに比べて、高年齢者は豊かな経験や人脈、要領の面で若年者を上回っているので、若年者と高齢者の長所を生かしてお互いを補完する形で雇用が提供されると、高年齢者により若年者の雇用機会が奪われる「置換え効果」の問題が少しは解消されることが期待される。高年齢者と若年者が共に活躍できるように、企業は業務の「補完性」を高めるための施策を講じることが望ましい。
(Newsweek 9月7日)

高齢者の雇用が拡大するとその分、若年者の雇用が縮小するという主張はよく耳にする。実際、欧米や韓国では高齢者よりも若年者の失業率が高く、社会問題となっている。一方、若年者失業率が低下した国では高齢者就業率が高くなる傾向があるという調査報告もある。

相互に矛盾した主張に見えるが、どちらも事実だ。高齢者と若年者との間で雇用の「置換え効果」がどの程度現われるかは、結局、社会の成長率に依存していることが多い。成長率の高い社会では全ての年齢で求人は多く失業率は低いが、低成長かリセッションの状況だと全体の雇用が縮小し、若年者よりも経験豊かな高齢者に雇用が偏る。

もっとも、終身雇用と年功序列が残る日本の大企業は別で、リセッションに直面すると高齢者から希望退職を募り、新卒採用の数を維持しようとする。つまり、高齢者を若年者に置き換えるという、欧米とは逆の「置換え効果」が現われる。

いずれの「置換え効果」にしても、企業が高齢者と若年者の「補完性」を高める施策を推進することは、その抑制に効果的だ。ただし、その効果が発揮されるには、企業の持続的な成長が前提となることに留意しなければならない。