介護シェアリング、労働力不足解消へ

「介護シェアリング」は介護施設で働く職員の働き方改革や人材不足の解消につなげるものだ。介護従事者の業務を送迎や入浴介助、清掃などに細分化し、スタッフを雇用することで、働き方を改善する。
(中略)
従来の時間単位のシフトで分けた働き方ではなく、「送迎」「入浴」「食事の配膳・下膳」「清掃」「リネン交換」「口腔ケア」といった業務の塊ごとに細分化した。それぞれを専門的に担うスタッフを雇用することで、今まで一人のスタッフが行っていた複雑な業務を、複数の人でシンプルに行う、という勤務形態に変えた。
(オルタナ 8月7日)

フォードが世界で初めて自動車の大量生産を始めたとき、それを可能にしたのは製造作業の細分化であった。作業を細分化して担当する工員の専門的なスキルを高め、それらを効率的につなぐ製造ラインを作って、製造工程全体の生産性を飛躍的に向上させることに成功したのだ。現代の自動車工場では、単純作業はロボットに任せ、工員は、逆に、複数の作業を担当する傾向にある。同じ製造ラインと同じ要員で多品種少量生産に対応するためには、その方が合理的なこともあるからだ。

そして今、再び、時代は業務の細分化へ動いている。その原因のひとつは、働き方の多様化だ。1日8時間、フルタイムで働くことを前提にすれば、一人の従業員が複数の業務を担当できる方が、無駄が少ない。しかし、必要な時だけ、必要な人材を調達して業務を頼めるのであれば、その方が効率的で、かつ、作業の質も高い。

高齢者の就労率が高くなり、現役層も副業を持つことが一般的になると、専門的な能力を活かして複数の職場で働く人は増える。今後は、「介護シェアリング」だけでなく、様々な業界で仕事のシェアリングが拡がるだろう。それに伴い、高齢者の就労機会も拡大するに違いない。