生活保護世帯、26年ぶりに減も高齢者は増加

厚生労働省は4日、2018年度の生活保護受給世帯数(月平均)が前年度比0.2%減の163万7422世帯になったと発表した。前年度と比べ減少したのは26年ぶり。同省は近年の雇用状況の改善が影響したとみている。
受給者数(同)は1.3%減の209万6838世帯となった。一時的な保護停止を除く受給世帯の内訳を見ると、「高齢者」が2.0%増の88万2022世帯で前年度よりも増えた一方、高齢者以外は「母子」が6.4%減の8万6579世帯、「障害者・傷病者」が1.7%減の41万2282世帯といずれも減少した。
(時事通信 3月4日)

政府は穏やかな景気拡大が続いているとしてきたが、一方で、生活保護受給世帯の数は高齢者を中心に増加を続けていた。2018年度は、それが減少に転じた。高齢者の受給世帯の増加をそれ以外の受給世帯の減少が上回った結果だ。2018年度は、確かに、人手不足が顕著になった年であり、特に女性の就業者は増え、賃金も上昇した。全国的な保育園の定員増加も母子家庭の収入を増やすのには追い風だった。

しかし、高齢の生活保護受給者が増加する傾向には、歯止めがかかっていない。高齢化が進んでいることを考えれば当然の結果ではあるが、2%の増加はやや高い。この中には、健康上の問題で働けない人々も多く含まれてはいるが、働けるのに働けない人も一定数存在している。これらの高齢者に如何に社会に参画してもらい、収入を得てもらうかは、当人だけでなく、日本社会全体が考えなければならない問題だ。

最近、AIの学習データの作成を高齢者に依頼するケースが増えている。例えば、犬や猫の画像を識別するAIを作る場合、人間が画像を見て、これは猫の写真、次は犬、というように画像に正解のラベルを付加し、それらのデータをAIに学習させる必要がある。こうしたラベル付けの作業は、特段体力を必要とするわけでもなく、特殊な技能を使うわけでもない。自由な時間がある高齢者には向いている仕事だ。このような今の時代に新たに生まれてきた仕事も、高齢者の就業機会の拡大に積極的に活用すべきだ。