75歳から受給も可能 政府の改革案まとまる

政府が検討を進めてきた公的年金制度の改革案が5日、固まった。中小企業で働くパート労働者も厚生年金への加入を義務づけるほか、75歳から受け取り始めると月あたりの年金額を最大で84%増やせる仕組みに変える。制度の支え手拡大や高齢者の就業促進に重点を置く。ただ現在の高齢者への給付を抑え、将来世代に目配りする改革はなお不十分だ。
(日本経済新聞 12月5日)

世界の中で、日本の高齢化対策の評価が低いのは、年金制度の持続性に疑義があるためだ。少子高齢化が進む一方で、国家財政の巨額の赤字が続いている現状では、客観的に見て現行制度の維持は難しい。もっとも、外国から指摘されるまでもなく、日本の若い人々も年金制度の将来に疑問を抱いている。そのため、若年層の国民年金加入率は低迷したままだ。

この現状を改善させるには、年金制度の支えての拡大は避けて通れない。今回の政府の改革案では、年金の受給を75歳まで延期可能にする他、パートなどの短時間労働者が厚生年金に加入する対象企業の規模を引き下げる。現状は従業員501人以上の企業が対象だが、これを101人や51人に引き下げることで、加入者の増加を図り、厚生年金の収入を確保するのが狙いだ。

ただ、狙いは他にもある。近年、高齢の貧困層が増加し、行政が負担する生活保護の費用は増え続けている。中小企業に勤める短時間労働者は、比較的所得が低く、国民年金の加入率も高くない。この層の人々が将来貧困層にならないようにするためには、厚生年金の加入者にすることが重要になる。

この改正案が成立することで、負担が重くなるのは、新たに厚生年金の掛け金を支払うことになる中小企業だが、そもそも、企業規模によって、厚生年金の有無が変わることは不合理だ。中小企業も、年金は企業にとっての普遍的な社会的責任の一つ、と認識すべきだろう。