小川の庄おやき村、高齢者雇用で所得向上 「縄文おやき」が一助

日本は少子高齢化、人口減による急激な人手不足が喫緊の課題となっている。政府は高齢者雇用支援を進めているが、いち早く地域の“おばあちゃん”のものづくりの知恵と手腕に着目したのが信州小川村だ。伝統の郷土食「おやき」の商品化を進め、地域の高齢者雇用と所得向上を実現。雄大な北アルプスの眺望を望む自然を堪能できる観光と食の連携で、「縄文おやき」を一大ブランドに成長させた。
日本全国、海外からも観光客が訪れる「小川の庄 おやき村」は長野駅から約30分の山間部にある。縄文時代の住居を模した竪穴式住居で“おじいちゃん”や“おばあちゃん”がいろりと焙烙(ほうろく)で、滋味豊かでおいしい「縄文おやき」を焼いてくれる。おやき体験(2個540円)も人気。
(日本食糧新聞 10月18日)

伝統的な文化を紹介する観光地では、高齢であることが付加価値を生む仕事がある。「おやき村」の“おじいちゃん”や“おばあちゃん”はその例だ。「縄文おやき」という古代の食物を彷彿とさせるネーミングの食べ物を“おじいちゃん”や“おばあちゃん”が焼いてくれることで、観光客は非日常的で新鮮な体験をしたと感じる。おやき村が60歳入社で定年がないというのもうなずける。

一方で、1日当たり5千~1万個の「縄文おやき」を製造している第三セクターの会社は、若い世代を中心に事業を展開してきた。事業のスキームづくりやマーケティングでは、若い人を含めた組織が主導し、観光客へのサービスでは高齢者の魅力を活用するという世代間の分業がシナジー効果を生み出している。高齢者を若い労働力の補完ではなく、高齢者ならではの付加価値を提供してくれる人材として活用している「おやき村」に、学ぶべきことは多い。