高齢者の雇用保険加入、「週20時間」の要件緩和を検討

厚生労働省は65歳以上の高齢者で雇用保険の適用条件を緩和する検討に入った。現在は1社で週20時間以上働かないと加入できない。高齢者に限り、複数の職場で合算して週20時間以上となれば加入できるようにする。政府が高齢者の就労機会の拡大を促していることに対応する。年内にも結論を出し、来年の通常国会で法改正をめざす。
(日本経済新聞 10月6日)

高齢者に限らず、複数の企業で仕事をする人は増えている。こうした人々にも雇用保険の適用を可能にするのは、社会的に必要なことだ。ただ、制度設計はなかなか難しい。

単純に複数の職場で合算して週20時間以上働くことを加入条件とすると、ひとつの職場で解雇された場合、他のすべての職場で雇用保険の適用外になってしまう。たとえば、A社とB社で8時間、C社で4時間働いて週20時間の場合、すべての企業で雇用保険の適用となるが、C社で解雇されると、A社とB社でも雇用保険適用外となる。したがって、C社で解雇された後に、A社とB社で解雇されても失業給付は受けられない。これでは、A社とB社で払ってきた保険料は無駄になる。雇用保険財政としては収入が増えて支出が減るので改善するが、保険料を負担する労使にとってメリットがあるのかどうかは微妙だ。この制度改正によって何が起こるのか、様々な面から考える必要があるだろう。