輝く「じいじ」と「ばあば」 愛知県の旧足助町

人口減少時代のまちづくりをどう進めるべきか-。愛知県の旧足助町(現在は豊田市)は、その先進地域として知られている。観光と高齢者雇用、そして福祉が共存する複合拠点を整えたのは30年前。地域の高齢化率は40%を超えたが、70歳を超えた人が今も、現役で数多く働いている。
 中部地方の紅葉の名所「香嵐渓(こうらんけい)」のほど近く。観光と福祉の複合拠点「百年草」がある。アユ釣りの名所の足助川に面したホテルにはフレンチレストランがあり、豊田市社会福祉協議会が運営する介護事業所「百年草デイサービスセンター」が共存する。介護保険のケアプランを作る「居宅介護支援事業所」や、訪問介護を行う「ヘルパーステーション」、じいじ(爺)がハムやベーコンをつくる「ZiZi(じじ)工房」、ばあば(婆)がパンを焼く「バーバラはうす」も隣接する。
 「百年草」は旧足助町が平成2年につくった。命名には「誰もが雑草のように100歳まで生きよう」との願いが込められた。今も60人以上いるスタッフの半数が60代、70代だ。
(産経新聞 9月27日)

地方では都市部よりも高齢化の進行が早い。しかし、密な人間関係を基に地域のコミュニティーが機能しやすいという利点も持っている。愛知県の旧足助町は、高齢者を含む住民同士が助け合って、介護サービスや雇用を維持している典型的な例だ。

旧足助町は、名古屋に近い観光地で一定の観光客が期待できるという地の利もあるが、観光のような外需だけでなく、地域経済の内需の担い手としても高齢者が重要な役割を負っている。雇用も、農業のような伝統的な一次産業だけでなく、ハム製造やパン屋など製造業やサービス業にも拡大している。この職種の多様性が、高齢者の雇用の選択の幅を拡げ、就労機会の拡大につながった。

高齢者の雇用拡大は、「高齢者向きの仕事はこのようなものだ。」という固定観念を超えることから始まる。旧足助町の取り組みは、そのことを改めて教えてくれた。