高齢運転手 業界手探り、タクシーなど人手不足

東京・池袋で八十代男性が乗用車を暴走させ、母子らをはねて死傷させた事故の後、高齢者が運転免許を返納する動きが広がっている。ただ、タクシーやトラック業界などは人手不足で、高齢ドライバーの割合は増えつつある。業界団体は高齢者を雇用する際のガイドラインを作るなどしているが、身体や認知機能の衰えは個人差が大きく、安全確保へ手探りが続いている。(東京新聞 8月8日)

高齢のドライバーによる交通事故が増えている。人口に占める高齢者の割合が増加していることを考えれば、高齢者の事故件数が増えるのは致し方ない面もあるが、高齢化が急速に進む中で、高齢者の交通事故防止は、社会全体として取り組まなければならない課題だ。少なくとも大規模な人身事故は抑制する必要がある。

高齢者の運転免許返納は、こうした事故の発生を抑制する対策のひとつではあるが、業務として運転している人々にとっては、仕事を辞めることに直結する。また、自家用車以外に交通手段のない地方では、運転免許なしでは生活が成り立たないこともある。できれば、運転を誤っても事故につながらないような技術開発を進め、高齢者でも安全に運転できる車社会を目指す方が望ましい。

ただ、既に実用化されている急加速防止機能付の自動車のように、今でも選択可能な技術は存在するが、割高でもある。すべての自家用車に義務付けるのには抵抗もあるだろう。まずは、車の運転が業務の一部であるタクシーやトラック業界が率先して安全機能付の車輌の購入を推進するべきだ。タクシーやトラック業界にとって、車の安全機能への投資は、幅広い運転手の人材確保というリターンをもたらす。決してコストばかりではない。運輸業界は自動車業界とのコラボレーションを積極的に進め、高齢者でも安全な車社会の実現を目指すべきだ。