氷河期世代や高齢者の雇用促進 今年の骨太方針案

政府は31日の経済財政諮問会議で、今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の骨子案を示した。不安定な生活を送る人が多い「就職氷河期世代」の就職を後押しする制度や、高齢者雇用の促進について盛り込んだ。人手不足が深刻になる中、働き手を増やして成長率を維持したい狙いがある。6月中の閣議決定をめざす。
(朝日新聞 5月31日)

40代前後の就職氷河期世代は、他の世代に比べて正社員の割合が低く、平均収入が低いのは社会的な問題だ。しかし、現在も働いているこの世代の正社員が増えても人手不足の解消に直ちにつながるわけではない。ただ、非正規で働くこの世代が正社員になれば、企業の社会保険に係る支出は増え、健康保険や年金の財政にプラスの影響を及ぼし、国としてはメリットがある。もっとも、これでは、国の負担を企業に移転しただけになるので、企業への助成金を拡充する施策と抱き合わせることになるだろう。結局のところ、社会保障の負担の仕組みが複雑になるだけで、社会全体では、それほど利得があるわけではない。

就職氷河期世代の正社員化を社会的意義のあるものにするには、この世代の人々の潜在的な能力を開花させ、社会で役立ててもらうことが重要だ。この世代には、若い時から長年非正規雇用であったために、能力を持っていながら、十分に業務のノウハウを蓄積できなかった人も少なくない。キャリアアップの機会を積極的に与えて、社会の中でより大きな付加価値を創造してもらうよう促すのが、国のとるべき「骨太の方針」だ。

そして、このことは、高齢者の雇用拡大にも当てはまる。高齢者の継続雇用を延長して、年金の支給開始年齢を引き上げ、国の年金財政の負担を軽減するだけでなく、高齢者の能力開発とその発揮の機会を充実させ、より大きな付加価値を生み出せるような社会的な仕組みを構築しなければならない。