高齢者雇用拡大「本人の体力に難」 日商の中小調査

政府が進める65歳超の高齢者雇用の拡大をめぐり、中小企業が対応に苦慮している。日本商工会議所の調査では2割の企業が「65歳までは雇用できるが、それ以上の対応は難しい」と答えており、このうち6割が「本人の体力的な面で難しい」ことを理由に挙げた。

65歳超についても雇用が義務化された場合に備え、雇用契約の解消を円滑に行う制度の創設を求める企業が多かった。日商は企業の要望を踏まえ、厚生労働省に制度の検討を求める。(日本経済新聞 5月20日)

70歳までの雇用の義務化を進めたい政府に対して、企業側では義務化に反対する声が根強くある。特に、業務の範囲が限られている中小企業では、高齢者に担当してもらう仕事を探すのに苦慮するケースも少なくない。

日商の調査が示すように、主として肉体的な労力を必要とする業務を行っている企業において、「本人の体力」が理由で65歳超の雇用が難しいというのはありがちなことだ。本人に働く意思があっても、客観的に見て、今まで担当してきた仕事をこなすだけの体力がなければ、企業としては、その仕事に継続して割り当てることは難しい。無理をすれば労災が起きるリスクもある。

この問題について、日商は、厚労省に対して、雇用契約の解消を円滑に行う制度の創設を求める構えだが、その前に雇用契約の多様化を推進するべきだろう。たとえば、体力面で心配のある従業員に対しては、体力を必要としない業務にシフトし、その業務量が少なければ、フルタイムではなく、勤務時間を短縮して仕事を多くの従業員でシェアし、従業員には他企業での副業を認める、という雇用形態もあっていい。