公務員定年、欧米は撤廃・延長 日本も65歳へ上げ検討

政府が国家公務員の定年の引き上げを検討している。現在の60歳から段階的に65歳まで延長する方針だ。政府は社会保障制度改革の一環として「生涯現役社会」を掲げている。高齢でも意欲さえあれば働ける社会にするため、まず国家公務員の定年を延長し、民間にも広げる狙いだ。海外ではどう取り組んでいるのだろうか。
(日本経済新聞 5月10日)

国家公務員の定年について、欧米と比較する場合、2つの観点が必要になる。ひとつは、公務員に限らず、民間企業も含めて、日本とどのような違いがあるのかという点だ。そして、もうひとつは、民間企業の従業員と公務員との間の違いが国によってどのように異なるのかという点だ。

欧米で公務員の定年が撤廃・延長の方向にあるのは事実だが、それは、民間企業も含めた社会全体のトレンドでもある。そもそも年齢による差別を禁止している国では、民間企業でも定年はない。そして、このトレンドは、日本でも概ね同じだ。日本政府は、官民ともに70歳まで雇用を継続することを目指している。ただ、日本では定年延長に踏み切る企業は、増加しているものの、まだ少ない。

一方、官民の差については、欧米の公務員の年金・恩給支給額は、民間よりもやや高い。欧米において、国家公務員の恩給は、民間企業の年金とは異なり、薄給で国家に奉仕した者への報奨金のような性格がある。日本もかつては退職した国家公務員に支給されるお金を恩給と呼んでいたが、今は共済年金となり、給付水準は民間の厚生年金と大差なくなった。

官民格差が大きい方が良いのか、小さい方が良いのかは、一概には判断できない。それは、その社会が国家公務員にどの程度の能力を期待しているかにも依存する。有能な人材を国家公務員に登用すべきと社会が考えるなら、民間の平均値よりも高い給与水準や年金を確保すべきだろう。いずれにしても、期待される能力を持った人が民間で得られる待遇を参考に国家公務員の待遇が決められるべきだ。単に、民間企業全体の平均値よりも高いというだけでは、公務員優遇とはならない。