人手不足、高齢者がリリーフ 大手で広がる採用増や待遇改善

経験豊富な高齢者の採用を増やしたり、待遇を改善したりする動きが大手企業に広がってきた。今週から本格化する春闘の労使交渉でも、深刻化する人手不足の穴を埋める即戦力として期待されるシルバー人材の活用が焦点になりそうだ。
トヨタ自動車は、60歳の定年退職後に再雇用した技能系従業員の待遇を一段と充実し、生産ラインで働く人の年収を現行から100万~150万円増やした雇用形態を2020年度に新設する方針だ。「熟練の技」をつなぎ留め、若手に技能を伝承してもらう。
外食大手すかいらーくホールディングスは今年1月から、パートやアルバイトの雇用年齢の上限を従来の70歳から75歳に引き上げた。長年、接客や調理に携わってきた優秀な高齢者を確保する狙い。「元気な高齢者が多く、長く働きたいという要望があった」という。
(SankeiBiz 2月13日)

中小企業が先行してきた高齢者の雇用だが、人手不足が大手にも拡がるに至って、大手企業でも高齢者の雇用増や待遇改善が進んでいる。人手を確保するためには待遇改善が必要であり、待遇を改善するには付加価値を上げる必要があり、そのためには、長年蓄積してきたノウハウや熟練の技などの高齢者ならではの強みを業務で発揮してもらうことが期待されている。この流れは、人手不足が解消されない限り、今後も業界を越えて広く浸透していくことだろう。

大手企業での高齢者雇用は、まずブルーカラーの業務で拡大することが多いが、今後は、事務職にも拡がる。現在、AIやRPA(ロボットによる業務自動化)の普及によって、事務の効率化が進んでいるが、人間の判断がすべて無くなるわけではない。機械的なルーチンワークが自動化される分、自動化できない業務での人間の判断がむしろ重要になる。そうした業務で、高齢の従業員の経験とノウハウをいかに活用するかが、企業にとっても働く高齢者にとっても、今後の大きな課題だ。