シニア活用へ成果給・ポスト 意欲高める動き広がる

シニア社員の処遇を改善する動きが企業に広がってきた。60歳の再雇用時に減額されることが多かった基本給を引き上げるだけでなく、成果報酬の導入や責任の重いポストの用意で就労意欲を高めるようとしている。政府が目指す70歳まで働く社会づくりにはシニアの活躍が欠かせない。厚生労働省はこうした流れが中小企業にも浸透するよう補助金で後押しする。
(日本経済新聞 1月6日)

60歳で再雇用されるときに報酬が大きく引き下げられることは、未だに、日本企業の間に慣習として残っている。OECDも、諸外国と比較して、この問題を日本固有の問題として指摘しているが、すぐには変わりそうもない。そもそも、定年を延長するのではなく、嘱託などで再雇用するという制度を選択する目的のひとつは、賃金を抑制することにあった。

しかし、ここへきて、再雇用でも待遇を極端に引き下げず、成果に応じて一定の給与や賞与を与える企業が増えてきた。60歳以上の従業員を戦力として活用する必要に迫られている企業が増えていることの証左だ。戦力として活用するには、勤労意欲の維持は欠かせない。

ただ、中小企業は、50代の給与水準が高くないこともあって、もともと60歳以降でもそれほど報酬は下がらない。中小企業にとっての問題は、むしろ、シニアを含めた従業員全体の生産性の低さだ。生産性が低い状況で厚生労働省が雇用保険から補助金を出しても、中小企業のシニアの処遇改善に対する寄与は限られる。むしろ、国が取り組むべきは、シニアの生産性向上に役立つノウハウの社会的共有だ。