定年制廃止や賃金改革を 高齢者雇用でOECD提言

経済協力開発機構(OECD)は20日、少子高齢化による労働力人口の減少に対応するため、日本の高齢者の雇用政策に関する提言を発表した。定年制の廃止や能力に応じた賃金制度改革を実施することで、働き続けやすい雇用環境を整えるよう求めた。
報告書は、多くの企業が定年としている60歳という年齢が低いと指摘。定年年齢を徐々に引き上げ、その後、多くのOECD諸国のように廃止を検討することを提案した。定年後に非正規で再雇用されるケースが多いため、非正規労働者と正社員との不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金」を高齢者雇用でも適切に実施するよう求めた。
(共同通信 12月20日)

定年制の廃止と定年後の不合理な待遇差の解消を求めるOECDの指摘は正しい。日本政府も目指すところは、概ね同じだ。日本企業も、定年制の廃止や定年後の再雇用者の待遇改善に乗り出している。

ただ、その歩みはそれほど早くない。少なくとも、外国から見るとその変化のスピードは遅い。OECDは、日本社会の動きに、苛立ちすら感じているだろう。彼らは、同一労働同一賃金が保障されず、定年制が存続するという不合理な労働慣行が、先進国である日本からなくならないことが理解できない。

しかし、多くの日本人の意識の奥には、年齢によってライフステージが決まり、ライフステージによって必要な収入が決まり、従業員の必要な収入によって賃金が決まり、賃金によって労働、即ち、ポストが決まるという思考経路が残っている。そしてこれは、組織は、構成員を家族のように考え、その生活にまで責任を負うという日本の伝統的な組織観に基づけば、あながち不合理とは言えない。したがって、今後も日本社会の変化はゆっくりとしたものになるだろう。

その一方で、少子高齢化やグローバル化など、現在の日本が置かれている環境に適応するには、OECDが言う合理性を追求する必要がある。結局のところ、日本社会全体でコンセンサスを維持しながら、ゆっくりであっても変化を推し進める他に、道はない。