高齢従業員活躍、松山で事例を学ぶセミナー

高齢従業員の活躍に向けた「65歳超雇用推進セミナー」が11日、松山市西垣生町のポリテクセンター愛媛であり、企業の人事担当者ら約50人が人材活用のメリットや県内企業の取り組みを学んだ。
 (中略)
 70歳までの継続雇用制度を設けている2社が事例発表。電気通信工事業のジーケイエス(今治市)は、若手社員になじみの薄い古い通信ケーブルの修理で高齢人材が活躍していることを紹介。教材用の模型を作るなどして技能伝承も積極的に行っているとした。
 船舶関連の来島テック(同)では、後輩や工業高校の生徒らに、作業者の勘に頼る面が多い溶接作業を実演指導。高温の環境下での仕事が多いため、社としてチェック表を使って健康管理をしていると報告した。
(愛媛新聞 10月12日)

全国各地のセミナーで高齢者が職場で活躍する事例が盛んに紹介されている。高齢者を活用しようという意欲のある企業の関心も高い。愛媛県松山市で開催されたこのセミナーも参加者にとっては有意義な情報を得る良い機会となった。

ただ、高齢者の活躍事例に限らず、一般に、企業が事例を探す場合、自社と業種、業務や規模が近い事例に注目しがちだ。確かに、同業他社の情報は、自社にそのまま適用できることも多く、有益であることは間違いない。しかし一方で、そのまま自社に適用できる事例が少ないこともまた事実だ。たとえば、松山のセミナーで紹介された古い通信ケーブルの修理や造船の溶接作業を行っている企業は限られている。

むしろ、事例を調べる際により注目すべきは、その事例の結果に至った思考プロセスだ。たとえば、何故古い通信ケーブルの修理を高齢者に期待したのか、教材用模型を作ろうと発想するに至ったのはどうしてか、高齢者が培ってきた勘を後進に伝えるにはどうすれば効果的か、健康管理の手段としてチェック表を採用した経緯は何か、などの知見は、業種・業界を越えて役に立つ。高齢者の効果的な活用という課題の分析と施策立案のノウハウこそが、事例から学ぶべき重要なポイントだ。