学び直し休暇、助成を新設へ

政府は、社会人が仕事に役立つ技術や知識を大学などで学び直す「リカレント教育」の普及に向け、従業員に長期休暇を認めた企業への助成制度を来年度に新設する方針を固めた。高齢者雇用に積極的な企業への支援策も拡充する。年齢に関係なく挑戦できる社会を目指す安倍政権の看板政策「人づくり革命」の一環。
リカレント教育は、働く人に大学などで高度な専門知識や技術を身に付けてもらい、仕事の実力向上や有利な転職につなげる狙いがある。
新しい助成は、休暇期間の最低水準を「数カ月以上」へ引き上げ、より長期の休暇を促す方向だ。
(共同通信 7月22日)

欧米に比べて日本のリカレント教育は広がりに欠けている。その要因は、企業にもあるが従業員にもある。さらに、大学などの教育機関にもある。企業は、総論としては従業員に時代の変化に対応した能力開発を期待している一方で、現場は足元の業績を重視して、長期的な視野に立った学習には消極的だ。そのため、従業員の評価は能力ではなく結果を重視して行われる傾向がある。これでは、従業員は能力開発に努力するインセンティブを失い、目先の仕事をこなすことに終始する。加えて、大学などの教育機関も実務に直結する知識やノウハウを教育できているところは少ない。

こうした中で、リカレント教育を活用して能力を再開発し、それを社会に還元する原動力になり得るのは、50代以降の世代かもしれない。第一生命が2018年3月に行った「人世100年時代の働き方に関するアンケート調査」では、50代の約2割が学び直しを「将来行いたい」と答えている。この割合は、40代までの3割前後に比べれば低いが、定年を間近にして、なお、学び直しに意欲を持っている人が少なからずいることを示している。この層の人々は、会社の評価よりも、今後の自己実現のために学び直しをしようとしている人たちであり、新たな社会貢献を目指す層でもある。この50代に、長期休暇を取って学び直し、次の人生に備える機会を与えることは、日本社会全体にとって重要なことだ。