増加するシニアの起業家63万人

第二の人生として起業を選択するシニアが増えてきた。日本のシニア起業家は推定63万人、シニア人口(55~64歳)に占める割合は4%。過去10年間の伸び率では先進国平均を上回る。長寿化に加え、少子化や年金受給開始年齢の引き上げなどが要因だ。ただシニア起業家の割合そのものは先進国平均を下回る。
(日本経済新聞 6月5日)

働くシニアが増えれば、それに伴って起業するシニアの数が増えるのは当然だが、シニア起業家の数はシニア人口の増加のスピードを越えて増加している。シニア世代は、貯蓄を自己資本とし、過去の経験や人脈を活かすことができる分、身の丈にあった起業であれば、若い世代よりも、リスクを抑えて着実なリターンを期待することができる。

しかし、国際的に比較すると、日本全体の起業率は、今なお、低水準にとどまっているのも事実だ。上に引用した日本経済新聞の記事の根拠となったGEM(グローバル・アントレプレナーシップ・モニター)調査によると、日本の総合起業活動指数(TEA)は、2015年に調査対象となった61カ国中57位だ。TEAとは、起業の準備段階から報酬を受けている期間が3.5年未満までの人が成人人口に占める割合であり、起業活動の活発さを表す指標のひとつだ。

日本のTEAを抑制している要因は多様だが、そのひとつに事業機会認識の低さがある。起業に有利なチャンスが訪れると考えている人の成人人口に対する割合である事業機会認識指数は、先進国の中で最低の7.6%。これは、経済破綻が心配されるギリシャの14.2%の半分程度に過ぎない。

新たな事業機会を認識するには、市場と競争環境の動向を見極め、競争力のある価値を創造する能力が必要となる。これには、経験と人脈の豊富なシニアが貢献できる面も多い。新たな事業機会を起業によって世に問うこと、これもシニアに課せられた社会的使命のひとつなのかもしれない。