「希望者は65歳まで雇用」企業の74.1% 厚労省調査

厚生労働省が28日に発表した高年齢者の雇用状況(6月1日時点)によると、希望する人全員が65歳以上まで働ける企業の割合は74.1%で、前年から1.6ポイント増えた。企業の規模別では中小企業が76.5%なのに対して大企業では53.8%にとどまっている。

 従業員31人以上の15万3千社の状況をまとめた。74.1%の内訳は、定年制を廃止した企業が2.7%、65歳以上定年の企業は16.0%で、いずれも前年の調査と比べてわずかに上昇した。希望者全員が65歳以上まで働ける継続雇用制度を設けている企業は55.5%だった。

 2013年に施行された改正高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用を確保するために企業に対して「定年制廃止」「定年引き上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかを講じるように義務付けている。
(日本経済新聞 10月28日)

働く意思があれば、年齢に関係なく、誰もが働ける社会に近づきつつあるのは良いことだ。ただ、その歩みはそれほど早いとは言えない。希望する人全員が65歳以上まで働ける企業の割合は前年から増えてはいるが、増加率は1.6ポイントにとどまっている。特に、大企業は53.8%と依然として低い。

大企業の多くは、成果主義に移行してもなお、年功序列制度の要素も残している。その結果、50代の給与は中小企業に比べて高い。その高い給与水準を維持したまま65歳以上まで雇用することは企業にとって負担が大きい。一方、従業員の中には収入より自由な時間を重視する人もいて、65歳以上の雇用を希望する人がそれほど多くないという事情もある。

こうした中で、高齢者が継続して働く機会を増やすには、継続雇用制度を柔軟に設計し、多様化する必要がある。仕事への対価は下げないが、フルタイムでなくてもパートタイムや単発でも仕事を頼めるようにする、あるいは、インターネットを利用して自宅や旅行先での仕事を可能にする、など様々な工夫をすることが重要だ。多様な選択肢の中からそれぞれの従業員と事業部門のニーズに合った雇用形態を選ぶことができれば、両者にとって価値の高い雇用関係となるだろう。