市場を先読みする83歳のストラテジスト

ブラックストーン・グループ(BX)のストラテジストであるバイロン・ウィーン氏は83歳にもかかわらず、世界を飛び回って、経済や市場に対する見方や、人生の教訓を投資家に説いている。また、世界の著名投資家や中央銀行関係者、政府関係者からも話を聞いて、これらの会合から得た意見や情報を、毎月執筆している投資戦略エッセーや、今年は恐らく100回に達するブラックストーンの顧客とのミーティングに活用している。ちなみに、投資戦略エッセーは1万7000カ所に電子メール配信されているが、読者数はそれをはるかに上回るだろう。
(中略)

3年前に、あるコンファレンスで金融的な内容ではなく個人的な話をするように依頼されて、「人生の教訓」リストを考え出した。当時は12項目だったが最近では20項目に増えている。その中には、意欲的にネットワークを構築すること、常に読むこと、広く旅行すること、引退しないことが含まれている。また慈善活動に対するアプローチは、「喜びを拡散することではなく、痛みを解消することにある。音楽、劇場、美術館には裕福な支持者が多いために、彼らに任せておけば良い。一方で、社会奉仕、病院、教育機関は世界をより良くでき、恵まれない人々にもアメリカン・ドリームへの道を開かせることになる」と語る。その方針に沿って、母校であるハーバード大学で2人分の教授の費用を拠出している他、孤児に対する奨学金などの資金を援助している。同氏自身が14歳で孤児となり、高校で優秀な成績を収めて、ハーバード大学の奨学金を獲得した経験にも基づいている。
(中略)

同年齢の人々が投資の世界にほとんど残っていない中で、ウィーン氏は現在の職務、プラットフォーム、影響力、名声を愛している。本誌に対して、「ブラックストーンが私を退職させるためには、棺桶で運び出さなければならないだろう。職務はきつく、ブラックストーンは年齢では手を抜いてくれない。私は今や最高齢の社員だが、私が職務を果たせると感じている限りにおいて勤め続ける予定だ」と語った。ちなみに、ブラックストーンの2番目の高齢者は、共同創業者で最高経営責任者(CEO)兼会長のスティーブ・シュワルツマン氏でウィーン氏より一回り以上年下の69歳だ。
(ウォールストリート・ジャーナル 5月24日)

24時間、世界の金融市場は休みなく動き続けている。その中で、第一線の金融ストラテジストとして生きていくことは、40代でも厳しい。年齢に関係なく仕事をするのが普通の米国企業にあっても、83歳のストラテジストは珍しいだろう。

また、ウィーン氏は、他の幹部社員と異なり、プライベート・ジェットを使わずに一般の航空会社のフライトを利用することでも有名だ。東京都の舛添知事は一般の航空会社のファーストクラスに乗っていることを批判されたが、米国の金融界では、プライベート・ジェットを使わずに、ファーストクラスに乗ることの方が驚かれる。ウィーン氏は、83歳になっても、プライベート・ジェットでくつろぐことより、航空会社のフライトで多くの人々と触れ合うことを楽しんでいる。この人との関わりを楽しむ姿勢こそが、高齢になっても現役を続けるエネルギーの源泉なのかもしれない。