安中の桑園事業、農地借り受け高齢者や障害者を雇用へ

安中市松井田町人見の下足名田地区の農地約三ヘクタールを藤岡市の農業法人ワイピーファームが借り受け、桑園として営農することになり、二十九日、地権者組織とワイピー社、市の三者が地域振興に向けた相互連携に関する協定を締結した。県農業公社が仲介した。
同地区では農家の高齢化や担い手不足による耕作放棄などが増加。先祖伝来の農地管理に危機感を持つ地権者十五人が、地区振興協議会をつくり同公社を通じて新たな担い手を求めていた。一方、同社は事業拡大に向け桑園とする集約農地を探していた。

協定には、同社の営農に関し地権者と市が支援、協力し、同社は地域との調和、協調に努め、労働力確保では障害者や高齢者の雇用についても盛り込まれた。
協議会の須藤英利代表は「地域の産業として定着してほしい」と期待を込めた。同社の石井功一社長は「大切な農地を生かし桑園事業を通じて貢献できるよう努力する」と述べた。茂木英子市長は「障害者雇用のモデルケースになる」と意義を強調した。

同社では、すでにクワの葉のサプリメントを販売している。同地区に最大一万本のクワを植え、二・五トンの乾燥パウダーを収穫し、和菓子などへも利用する計画という。
(東京新聞 3月30日)

かつて、蚕の餌だった桑は、今や、サプリメントとして人間が食べるようになった。生糸の生産が盛んだった頃、日本中に桑畑があったことを思えば、桑栽培に適した農地は、今なお日本各地に残っているはずだ。これらの農地を農業法人が借り受けて組織的に運営すれば、生産性の高い桑園事業を全国で展開できるだろう。

また、農業法人であれば、個人農家に比べて分業が容易となり、多様な働き方を実現しやすくなる。能力や時間に制約のある高齢者や障害者にとって働きやすい職場だ。桑園事業に限らず、今後、農業法人と地元自治体との連携が進めば、地域の高齢者、障害者の雇用の受け皿の拡大が期待できる。